田井中家
律「ほら、聡! お姉様が耳掃除をしてやるぞ~」
律は竹の耳かきを片手にバシバシと自分の膝を叩く。
聡「え、いいって/// お、俺そんなに子供じゃないしッ! ///」
聡(ていうか、恥ずかしいし///)
律「いいから、いいから! ほれ、お姉様の膝枕だぞ~」グイ
聡(うお、や、やわらかいッ! ///)フニ
律「ん、耳真っ赤だぞ? のぼせた?」
律「それとも美人のお姉様に膝枕されてドキドキしてるのかな~?」ニヤニヤ
聡「そ、そんなわけねぇしッ! ///」
聡(その通りです///)
律「ま、それは置いといて、さっそく始めますかっと――」
律は左手で聡のほてったら頬を押さえながら、耳かきで耳の外側の溝を掻く。
聡(姉ちゃんの手ひんやりしてて気持ちいい……)
聡(いや俺の顔が熱いのか///)
カリ……カリ……
律「おお、結構たまってるな」
律「これじゃあ中が思いやられますな~」ニヤニヤ
聡「な、ふ、普段そんなところやらないだけだしッ!///」
律「はいはい、そういうことにしといてやるよ」
聡「本当なのに……」グスン
律「♪」カリカリ
聡(……にしても、やっぱ姉ちゃんにしてもらうのは気持ちいいな……)
聡(恥ずかしいけど……///)
耳かきのサジで耳の溝に溜まった汚れを掻き取った後、梵天(反対側のふ
わふわ)で溝に残ったカスを払う。
カリ…カリ……フサフサ……カリ……
聡(ああ、気持ちいいな……)
程よい力加減で掻かれて皮膚の感覚が敏感になった所を梵天の柔らかな羽毛で撫
でられる心地よさに、全身から力が抜ける。
掃除される場所は徐々に外側から耳穴に近い内側の溝へと移って行いく。
そして、遂にサジは耳穴の周囲のすり鉢状の地点に達した。
聡(いよいよだ///)
これからより敏感な耳穴の中を掻かれると思うと胸が高鳴る。
カリ…カリ……カリカリ……
しかし、律の操る耳かきはいつまでたっても穴の周囲を優しく掻いて回るだけで
一向に中まで入ってこない。
聡(そ、そんなッ!)
ちらりと姉を見てみれば、いやらし笑みを浮かべながら見返してきた。
律「~♪」ニタニタ
聡(う、嫌な予感……)
律「ねえ」カリカリ
聡「な、何?(汗)」
律「ねえねえ♪」
律「入れて欲しい?」ニヤリ
聡(うぅ……これは……)
律「ぐっふふふ、入れて欲しかったら『お姉様~、もう僕我慢できなぁい~』と
お言い!」ビッシ!
聡「な!?」
聡(そ、そんなのは、恥ずかしすぎる!! ///)
律「ほれほれ、言わないと続きやってあげないぞ~♪」グリグリ
律「もしくは『この醜い雄豚めに挿入してくださいませ~』でもいいぞ☆」
律「んん~?」ウリウリ
聡(な、そんなの無理だよ! ///)
聡(でも、言わないと本当に姉ちゃん続きやってくれなそうだし……)チラ
律「♪」ニヤニヤ
聡「ど、どうしても言わなきゃダメ? ///」
律「もち☆」
聡(うぅ……恥ずかしいけど、背に腹はかえられない(?)!)
聡「お、おお、お姉様ッ、も、もう僕我慢できなひィッ! ///」カァー
律「♪♪」
律「ヨシヨシ、聡は素直でいい子だな~」ナデナデ
律「しっかし、言わせたはいいけど、こっちも恥ずかしくなるセリフだな///
(苦笑)」ポリポリ
聡「うぅ、姉ちゃんヒドイよ~(涙目)」
律「ごめん、ごめん♪」
聡「もー///」プクー
律「そんじゃ、ご期待通りー」
――カリリッ……
聡「ッ!」ビクッ
するりと律の操る耳かきが穴の中に入ってくる。散々焦らされたため敏感になっ
た耳穴の入口辺りを軽く一掻きすると、そのまま奥へ――
律「ふふふ~ん♪」
そして耳穴の壁に触れるか触れないかという微妙な力加減で撫でるように優しく
耳垢を掻き出していく。
聡「……んッ」ゾクゾク
律「気持ちいい?」カリリ
聡「……うん」
律「♪」ニコ
聡「///」
カリリ……カリカリ……
耳かきが出入りし、産毛に絡まった耳垢が奥の方から入口へ掻き取られていく。
その度にまるで脳を直接羽毛で撫でられているかのような、むず痒さと気持ちよさ
が同時発生した。
律「ん~、なんつーか、中は割りと汚れてないなー」
トントンと掻き取った耳垢をティッシュの上に落としながら律は言う。
聡「うん、風呂上がりとかに割りとよく綿棒で掃除してるから」
律(ちぇっ、一番大きいのでも、ポテチのカスのカスってとこかなー)
律(そういや、昔、澪にしてあげた時はすごかったけ……)
律(澪、怖くて自分じゃできないらしく、そこはジャングル!? 密林!?
大魔境!! で、本当大収穫祭だったな!!)フスー
律(それに比べて――)
律「ブー、つまんないの~。男だったら『耳掃除めんどくせぇ~』とか言って耳
穴いっぱいの耳垢をためなさいよ~」プンスコ
聡「そんなこと言われても……」
律「じゃ来月も耳掃除してあげるから、それまで耳掃除禁止ね!」ビシッ
聡「う、うん///」
聡(やった! また姉ちゃんにしてもらえる!)ニヤニヤ
律「まー、ニヤニヤしちゃって! 聡ちゃんったら中学生にもなってシスコンな
んですからん♪」
聡(ヤベッ、今超ニヤついてた!)
聡「ち、ちげーしッ!///」
律「はいはい、と」カリリリ
一通り全方向の壁を掻き終わると、今度は少し強めに壁にこびりついた耳垢を剥
がし始める。
律「ちょっと強めに掻くから、痛かったら言ってね」
カリカリカリカリ……
先程までのもどかしいような掻き方とは打って変わって、それは痒いところをボリ
ボリと豪快に掻いた時のような痛みにも似た快感だった。
聡(確かにちょっと痛いけど――)
聡(でもすっごく気持ちいい……)
聡(気持ち良すぎて、眠くなってくる……あくびが……)ふぁー
律(目細めてあくびなんかしっちゃって)カリカリ
律(それに掻くのに合わせてまつ毛も揺れてる)カリカリ
律(もう中学生だけど、まだまだ可愛いもんだな、ふふふ)カリカリ
律「お! 奥の方に大物発見!」カリ…メキ…
聡「……ンッ」ゾクリ
律「聡~、頭動かすなよー」カリカリ…メキキ…
聡「う、うん」ゴクリ
聡(うわ、なんかすっごい奥まできてる……)
ゆっくりと繊細かつ力強く耳かきのサジは奥深くにこびり付いた大物を掘り起こし
てゆく。
律「ん~、もうちょい……」メキメキ……カリカリ…
律は懸命な発掘作業の結果できた隙間に耳かきのサジをねじ込み、てこの原理で一
気に剥がしにかかる。
プチプチとその塊に巻き込まれた産毛が抜けていくツンとした刺激から、確実にそ
れが剥がされていっているのがわかる。その感覚はちょうど痛みと快感の境界上で、
これ以上痛かったら苦痛というラインギリギリのものだった。しかし――
聡(超気持ちいい……)
カリ…メキ……カリ…
律「ん~、よっと!」ベリ
聡「……ッ!」ビクン
その最後の一掻きで、ズキリという快感とともに大物が剥がれおちた。
律「おお、これはなかなか……」シゲシゲ
ティッシュの上にはだいたい小指の爪の四分の一程の大きさの耳垢がのっていた。
聡「うわ、デカ……」
律「悪くはないが、まあブラックバスで言うところの60cm級だな」
律「もっと精進したまえ、弟よ」ハハハ
聡「もう、姉ちゃん意味がわかんないよ」ハァ
律「お姉様のために耳垢貯金を頑張りなさいってことだ」ヤレヤレ
聡「う、うん……」
聡(だったら頑張ろう。超頑張ろう!)
聡(頑張って貯めて、もう一回ねぇ――)
律「フゥー(耳に息吹きかけ)」
聡「ひゃうッ!?」ビクン
聡「ななななな、な、何するんだよ!? ///」
律「何って、仕上げだよ。し・あ・げ♪」
聡「うう、姉ちゃんやりすぎだよう///」ドキドキ
律「真っ赤になっちゃって、可愛いですわよ聡きゅん♪」ププー
聡「も、もう、からかわないでよ!///」
律「へい、へーい」ツマンナーイ
律「んじゃ、終わりね」
聡「へ?」
律「だから終わり。早くお姉様の麗しいおみ足からおどき!」
聡「いや、あの、その……」
律「ん? ん~?」ニヨニヨ
聡(うう、まただ……)
律「どうしたのかな~、聡くん?」ニマ
律「お姉さん、言ってくれなきゃわかんないよ~?」ニマニマ
聡「は、反対側もやってください///」
律「無理」キッパリ
聡「そんな!?」ガーン
律「疲れたから無理」
聡「!」ガーン
律「でっもーー」ニヤニヤ
律「カワイイ弟に『僕お姉ちゃんがだーい好き! こんなシスコンの弟でごめん
ね…。今日もお姉ちゃんに耳かきしてもらわないと眠れないよぅ!』って言って
もらえたら疲れも吹っ飛ぶんだけどな~」ニターリ
聡「うううう……///」プルプル
聡(どど、どうする! どうする、田井中聡!?)
聡(ここで屈服してしまったら姉の玩具になりさがるぞ!?)
聡(でも……)チラ
律「♪」(耳かきフリフリ)
聡「………」ゴクリ
聡「ぼぼぼ、ぼ、僕――///」
その夜、聡は姉の玩具になり下がり、田井中家には律の爆笑がこだました。
おわり