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耳の洞窟

【女×男】耳かき小説【女性視点】

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【女×男】耳かき小説【女性視点】

「ちょっと、コレ何ですか?」
「何って・・イヤホン?」
「そんなの見ればわかります。私が言ってるのはこっちですよ」
 彼が愛用するインナーホンの、シリコン部分をティッシュに乗せて見せる。
「耳のトコに耳垢ついてるじゃないですか、ちゃんと掃除してます?」
 不衛生というのもあるけれど、シリコンの部分にちょんと白っぽい耳垢がひっついてるのはみっともないという他ない。
「してるよ?風呂上りに綿棒と耳かきで。インナーホン使ってるんだから耳掃除はしっかりしないと。それに耳かき好きだから・・って何うなだれてるの?」
「……ソレが余計ダメなパターンだからです」


「ああ、やっぱりひどいことになってますよコレは」
 風呂上りの耳掃除は耳とってとても良くない。ただでさえデリケードな耳の皮膚が、風呂上りで柔らかくなった状態でガシガシと擦られ、炎症を起こしてしまう。綿棒で耳垢が奥に押し込められるというオマケ付きで。
 予想通り、彼の耳の中はそれはもうひどい有様だった。血と混じってところどころ赤黒くなった耳垢がある。外耳炎にならなかっただけ幸運かもしれない。
「ねえ、膝枕でしてくれるのは嬉しいんだけど・・痛くしないよね?」
 フトモモの上に乗った彼のアタマから不安そうな声が聞こえる。
「善処します」
 ホントなら、「痛くてもガマンして下さい」と言いたいところだけれど、ここで痛くしたらまた違った最悪な方法での耳掃除をやりかねない。何より私が傷を付けては本末転倒だ、ゆっくりやってあげよう。


「冷たい・・コレ、ウェットティッシュ?」
「はい、そうですよ」
 市販のウェットティッシュで、外耳のウラ側や耳のウラ側を拭いていく。
「綿棒じゃないんだね」
「綿棒や耳かきを使うのはそれらじゃないと耳道に届かないからですよ。ほら、黄色くなっちゃってるでしょう?」
 彼に汚れたウェットティッシュを見せると「うわ、汚い」とドン引きなんだか喜んでるんだかよくわからない声をあげた。
「これからは外側も掃除して下さいね?身体や顔を洗うついででもいいので」
「炎症を起こすからダメなんじゃないの?」
「耳道と違う場所だからいいんです。・・屁理屈言ってると次、削りますよ?」
「すいません優しくして下さいお願いです」

「じゃ、次は耳かきですよ。わかってるとは思いますケド、絶対動いちゃダメですからね」
「・・うん、わかってる」
一通り外耳をキレイにし終わった後、メインの耳かきにとりかかる。
心なしか、彼の身がさっきよりも縮こまっている気がする。ちょっと脅かしすぎただろうか。
「痛かったら言って下さいね……」
 岩のコケを剥がすように、さじの部分で削り、耳かきをすくいあげる。
カリカリとした感触が、竹の芯を通じて私の手に伝わってきた。
「・・うん、大丈夫……気持ちいいよ……」
 どうやら、力加減もちょうど良かったみたいだ。奥に耳垢を落とさないよう、慎重に耳かきを動かしつつ、ティッシュの上にポトリと落とした。
「うわ、さっきのもひどかったけどこれは……ねえ、血とか出てる?」
「大丈夫ですよ、ちょっと赤黒くなってますけど、もう乾いちゃってますし、あなたがガシガシやった傷も塞がってますから」
「……そんなにひどくしてたのかな」
「多分そうですね。ふつーより強くやってたからこんなにも……っと!」
「あ、ガリって鳴った」
 一回りほど大きな耳垢を、彼の耳穴から取り除く。
「ほら、フツーのよりも大きくなっちゃってます」
 さじの部分でこんもりと山を作ってる耳垢が取れた。ここまで大きいモノだと普通はパイみたいな層を作ってるものなのだけど、血とまじったお陰でカタマリのようになっていた。
「うおっ、でかいなコレ。……こんなに大きいのに取れなかったのか」
「やっぱり自分では見えないっていうのはネックですからね。ほら、反対側を向いて下さい」
「うん、わかった」
 ゴロンと彼が寝返りをうち、もう一つの耳が露わになった。さっきの耳と同じく、ところどころ赤黒い耳垢がゴロゴロしてるのは変わらないんだけど……。
(・・『壁』みたいなのができてますよ……)
 ちょんちょんと耳かきの先で突いてみると、奥のまた更に奥の方にある場所からミシリという重くて乾いた感触が伝わってきた。他の耳垢が小石に着いたコケなら、この『大物』はまるで木の幹に張り付いたキクラゲのようなモノだった。
「な、なんか変な感じしてるけど……鼓膜じゃない、よね?」
「鼓膜じゃありませんよ、近くにはありますけど。たぶんコレは綿棒で押し込められたカタマリですね。・・とりあえず、まずは他のを掃除しちゃいます」
 さっきと同じ手順……ウェットティッシュで耳を拭き、ゴロゴロとした耳垢を取り除いていく。
 彼は動かないでいてるけれど、突かれたことで『大物』の感触を自覚したのかずっとソワソワしていた。
「痒いですか?」
「うん、かなり」
「ガマンして下さい。まずは他のを取らないと『大物』に巻き込まれてボロボロと奥に落ちてしまいますから……」
「ん……」
それでも、他の部分が痒くなくなるのが気持ちいいのか、カリカリと小石のような耳垢を削る間、じっと耐えていてくれた。

そして、本命に取り掛かるときがきた。
「じゃ、大きいの取りますね」
「さっきのヤツ?」
「はい、今まで以上にじっとしてて下さいね。ホントに危ないですから……」
 ゆっくりと耳かきを耳道に進めていき、さじの部分が鼓膜付近にある耳垢の外縁部に到達した。
(ゆっくりと、痛くしないように……)
「なんかミシミシいってる……」
「そうですね……私も聞こえてきそうです……」
 耳かきから伝わってくる感触は、実際彼の言うようにガリガリというよりはミシミシといった感じだった。掻くというよりも、ひっぱるようにしながら耳垢をけずっていく。底の方をゾリゾリとなぞるようにして、さじの入るスキマを作った。
「あ、もうすぐ取れる?」
「はい、もうすぐ取れそうです……バリッとするかもしれないから動かないで下さいね」
 耳垢の底にできたとっかかりにさじをひっかけ、ガリッ、ベリッと力を入れて『大物』をこそぎ剥がした。
「うわ、何か今までで一番デカい音が!・・どんなのだった?」
「……こんなのでした」
 テッシュの上に私が落としたそれは、まるで平たい岩のような耳垢だった。
 さじの部分の何倍もある大きさな上に、綿棒に押し込まれたお陰で細かい層が硬くなってしまっている、コケのようにこびりついていたのも多分このあたりが原因だろう。色もそれらしく、白い部分はほとんど無くて薄い黄緑色そのものの、まさに「耳垢」だった。
「……こんなのが取れるなら今まで通り綿棒で押し込んでも構わないかも……」
「何か言いましたか?」
「いえ!何も!!」
慌てて彼が訂正したけれど、バッチリ私の耳には聞こえていた。
(ホント、仕方ない人ですね……これは次も私がやってあげなきゃいけないかもしれません。最低でもお風呂上りの掃除はやめさせないと)
 赤く腫れた耳道と、赤黒い耳垢を観ながら思う。
「耳かきが気持ちいいのはわかりますけど、大切なのはあなたのカラダなんですからね?」
「はい……」
 彼が健康でいてくれるなら、この膝の重みと面倒さなんて安いモノだ。
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