「お耳のおそうじ、しようか?」
おフロからあがったあと、おねえちゃんがいってきた。
「おそうじ?」
「そう、コレで耳のきたないのをおそうじするの」
おねえちゃんがもってる棒は先がまがってて、ふわふわしたものがついてる。
…なんかこわい。
「イヤ、やりたくない」
フツウのおそうじもケムたくてうるさいのに、耳のおそうじなんてもっとイヤだ。
「でも、おそうじしたらアンパンマンの声もよく聞こえるよ?もっと楽しくなるよ?」
「う・・うーん…」
それなら…。
「…わかった、やる」
「うん、いい子ね」
「いーい?ぜったい動いちゃダメよ」
「・・はぁい」
おねえちゃんの足にアタマをのせて、ヨコ向きに寝ころがった。おねえちゃんの匂いであんしんするけれど、これからあのヘンな棒が耳にはいってくる。
…やっぱりこわい。
―ゴッ!!
「ひっ!!」
「こら、動いたらダメじゃない!」
「だって・・びっくりしたんだもん」
耳のなかですごい音がした。ほんとうにびっくりしたし、なんだか耳のおくがジンジンしてる。
「もう、今度はじっとしてるのよ」
…でも、耳のおそうじはつづくらしい。
しかたないから、目をつむってちいさくなってガマン。
おそうじ・・はやくおわってほしい。
―ゴ・・ガガ…ガリ・・
「おねえちゃん、ちょっといたい・・」
耳のなかでガリガリ音がしてる。
どうろで転んだときみたいじゃないけれど、棒がゴソゴソしたら耳のなかヒリヒリして、いたい。
「大丈夫、もうちょっとしたら気持ちよくなるから」
…ほんとなのかな。いたいのが耳のなかでピリピリしてるのに。
―ガ・・カリ、ガリ…ガサ…
―ゴリ・・カサ……カリッ!
「んっ・・!」
なんだか耳のおくがピリッとした。
かさぶたを爪ではがしたときとよくにてる気がする。
―カリ・・ガサ、ガザ…
―ゴゴ…ガリ…ガリリ…
・・耳のなかがゴリゴリしてて、かさぶたみたいになにかが、はがれてる気がする…。
「どう?まだ痛い?」
「ん・・いたくない…きもちいい…」
「そう、良かった。でもまだ動いちゃダメよ」
「ん・・」
―カリッ、ガザ…ガサ・・カササ…
―ガザザ…ゴッ、カリッ…ガリッ…!
耳の中で、ベリベリ、ってなにかがとれてる…。
「もうちょっとだからねー」
―ガッ、ガッ…カリ・・カリ…
―ガリ・・ガリッ…カリッ、ガザザッ!
「んっ」
また耳のなかですごい音がして、こんどはきもちいいのがいっぱいきた。
・・なんだろう、耳がスースーする…。
「もう動いていいのよ、きたないのが取れたから・・ほら」
「わ…!」
目をあけてみて、ティッシュのうえにあったのは、小石くらいのきたないのだった。
きいろいけれど、ちょっと黒っぽかったりしてる。あんなのが耳にあったなんて。
「まだ耳がピリピリしてるでしょ?今度はフワフワ入れてあげるからね」
「はぁい」
―フワ・・モフ…ファサ…モフッ…
「ん…」
やっぱりフワフワはピリピリしないし、いたくない。
やわらかくてきもちい。
―ファサッ・・ササ…モフッ…フワ・・フワ…モフ……
―フワ、フワ…モフ…ファサッ……モフッ・・ファサ……
「はい、こっちの耳は終わり。じゃあそっちの耳やるから向きを変えて」
「うん……」
もっとフワフワしてほしかったけれど、こっちの耳もスッキリしないときもちわるい。
それに、またきもちよくガリガリしてもらいたい。
―ゴリッ!
「・・っ!」
やっぱりさいしょにガリガリするのはちょっといたい。
目をつぶっててよかった。
―カリ・・ゴゴ…ガリ…カサ・・
―ゴ・・ガザ・・カリ、ガサ…
棒のまがったところが耳のなかでガリガリしてる…。
ほんとうに石をひっかいてるみたい…。
―ガッ…カリ…カリ・・カササ・・
―コリリ、ゴリ…ガザ…カリッ…
「もう慣れたでしょ?気持ちいい?」
「…うん……」
―ガザ…カササ…カリ、カサ・・
―ガリ、ゴッ…ガリリ…ガリッ…
またベリベリ、ってはがれてきた…。
―ゴゴッ、ゴリ・・ガザ…カリッ…
―ガリッ…ガッ・・ゴゴ…ガザッ、ガザザッ!!
「ん・・!!」
すごい音がして、耳のなかがスッキリした。
きもちいいのがきたから、さっきのきたないのと、いっしょのがとれたんだろう…。
「痛くなかった?」
「ううん・・きもちよかった……」
「素直でよろしい。じゃあ、最後のフワフワ、やってあげる」
……そういえばフワフワがのこってた…。
…あれ、きもちいい…。
―モフ・・モフ…フワ、フワッ…ファサ……
―フワ・・モフッ…ファサッ・・フワ・・モフ…ササ……
……フワフワしてる……。
―ファサ・・モフ…フワ…フワッ…モフッ、ササ……
―モフッ・・フワ…ファサッ…フワ、フワッ…ササ・・ファサ……
「はい、おしまい。ね?気持ちよかったでしょ?・・どうしたの?」
「・・おねえちゃん…ねむたい……」
「・・そっか。まあ、耳のおそうじは眠たくなるし、お風呂あがりにやったからね。いいよ、寝ても。あとでお姉ちゃんが運んであげるから。・・お休みなさい」
「…ん…おやすみ…なさい………」